[ May 2010 ] Archive
5月の思い出
やりたい事とやらなきゃいけない事の狭間
その黒いことは寒天だ
ガドルフの百合:宮沢 賢治(著)、ささめや ゆき(絵)

ささめやさんにとっては、これが初めての絵本のお仕事だったそうです。その時の苦労話は何度読んでも飽きません。
「ストーリーは何度読んでもわからなかった」とささめやさんも言っているけど、わたしもやっぱりわかりませんでした。これも調べてみるといろんな説がぞろぞろと出てくるのだけど、そればかり見ていると本来の本の存在を忘れてしまいそうなのでもう見ない。
物語というよりほとんど詩のようなのですが、繰り返して読むうち、ことばの不思議さや表現に魅了されていくようです。
「ハックニー馬のしっぽのような、巫山戯た(ふざけた)楊の並木と陶製の白い空との下を、みじめな旅のガドルフは、力いっぱい、朝からつづけて歩いて居りました。」
久しぶりに読んでみたらこの最初の一文に妙にときめいてしまいました。どこからどこへ行くのか、なんのための旅なのかわかりませんが、ガドルフはとてもつらそうです。それだけど、ささめやさんの描くガドルフの姿はグレーの背景の中をいきいきと歩いていて、それがヘンに合っていてとてもいいなと思いました。『曖昧な犬』なんかはどう見ても笑っているし、ガドルフもこの犬を見て元気づけられたのかも。
ストーリーは難解だけど、雨にぬれた大きな黒い家のことを『黒い寒天』と表現したり、とても不思議だけど、その描写は独特で鮮烈です。一度読むと、そのことばがぐるぐる頭の中をめぐるよう。
電光に閃く百合の様子は、絵にもことばにもとても力がありました。ささめやさんてすごいなぁとあらためて思いました。
百合の花は折れてしまっても、これまでの苦しみから開放されたように再び旅を始めるガドルフの姿に、不思議と勇気が湧いてくるのでした。
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